資料提供・・・阿寒エゾシカ研究会


エゾシカ肉による『阿寒ブランド』の取組み

阿寒の新たな食材
 釧路市阿寒町は阿寒湖温泉という国内有数の観光地を有していますが、自然だけで観光客を呼べる時代ではありません。釧根地区の振興策として「食と観光」がキーワードになっています。観光客は、その地域でしか食べられないものを求めています。農業・水産業を中心とした「食」の開発が進められていますが、料理メニューとして阿寒の素材を使ったものは数が少なく、メイン食材としては弱いのが実態です。
 阿寒では新たな地域食材として「エゾシカ肉」の取り組みを進めています。エゾシカ肉には、高級食材としての可能性があります。メイン食材として名物料理となれば、観光客の誘致につながります。シカ肉は海外での人気が高い食材ですので、海外からの観光客誘致に役立つといえます。阿寒は温泉や景色に優位性がありますので、これに食が加われば大きな魅力になります。また、これからは都市観光がポイントになると言われていますので、昨年、平成17年10月に合併した釧路市では、湿原観光に加え、各種全国大会等による交流人口の増加が予想され、食の消費が期待できます。
 地産地消の新たな味として育てるためには、消費者に安全・安心を与える供給体制の整備が必要です。その中核をなすのが衛生基準の高い解体加工施設です。しっかりした流通体制を確立し、エゾシカ肉が阿寒の「食」の名産となれば、観光振興による経済活性化に寄与することができるといえます。
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1.エゾシカを取りまく状況
減らない生息数
 道東地域におけるエゾシカの生息数は、1998年から2000年までは減少したと思われましたが、その後増加に転じた可能性が高く、1993年を100(推定20万頭)とすれば、2004年では90±25と推定しています。増加を続ける可能性もあると見られています。
 阿寒町は、餌としての熊笹や広葉樹の樹皮が多いため、白糠町と合わせて道東地域最大の越冬地になっており、農林業に対する被害も深刻な状況が続いています。増える農業被害を防止するため、電気柵やネットフェンスを設置し、また森林被害に対しては忌避剤の塗布や散布を実施し、阿寒国立公園内では、餌場を設置して被害の防止に努めてきましたが、まだ道東地区では17億円を上回る被害額があるといわれています。
 個体数を減らすためには、ハンターによる狩猟や有害駆除による捕獲が必要です。道東地区の捕獲数は、1998年には7万頭を越えていましたが、その後減少し、2004年には4万1千頭前後と見られます。この原因として、ハンターの高齢化が進んでいることがあげられます。ハンターの4割が60歳以上で、20代は1%しかいません。「シカ猟は採算が合わない」との印象が強く、銃弾代やガソリン代の経費が掛かる割には、シカ肉の販売体制が確立されておらず収入につながりません。シカ肉の利活用対策を確立させ、食肉としての流通システムが整備されれば、ハンターのやる気につながり、ハンター人口が増え、個体数の抑制につながると思われます。
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鶏、魚に似た特性
 牛肉や豚肉と違って、シカ肉が一般消費者に流通されていないため、その美味しさがまだ認知されていませんが、東京の一流フランス料理店ではクリスマス時期にメインの材料に選ばれています。その肉質についても「道栄養士会釧根支部・エゾシカ肉有効活用研究プロジェクトチーム」のメンバーである釧路短大生活科学科岡本匡代助手の研究によると、タンパク質は和牛の1.8倍、豚の1.4倍もある反面、脂質は和牛の3.9%、豚の8.9%しかなく、鶏に最も似ており、さらに魚に多く含まれているドコサヘキサエン酸(DHA)などの人体に有益な「多価不飽和脂肪酸」が他の肉より多く、鶏のような魚のようなユニークな特性を持っていることが分かりました。生活習慣病を防止する食生活に有益な食材といえます。シカ肉は欧州やオセアニアでは市民権を得た食材であり、高級食材として受け入れられています。特にニュージーランドでは、赤鹿の家畜化が進み、世界最大の養鹿事業を展開しており、輸出品として外貨獲得に貢献しています。115万頭を飼育し1,760億円産業に発展している例もあります。
 シカ肉の中でもエゾシカは世界一の肉質といわれています。ロースやヒレばかりでなく、他の部位にそれぞれの特徴があり、部位に応じた調理法をすれば、全て美味しく食べられます。町商工会青年部が「エゾシカバーガー」を開発したことがきっかけになり、町内においてもエゾシカ料理を提供するホテル等が出てきていますが、解体加工施設が不足しているため、十分に供給できないのが実態です。
 シカは、レストランで食べるだけでなく、精肉の販売、ハムやソーセージの加工、剥製の製造、皮革製品の製造、角の加工販売など、地域の資源として多岐に利用できます。
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2.釧路市阿寒町を取りまく状況
地域内での起業を
 昭和45年に地域経済を支えてきた雄別炭鉱が閉山し、雄別・布状内地区では住民の9割が転出するという非常事態になりました。このため布状内工業団地を造成し、各種優遇措置を講じながら企業誘致に努めてきました。一時は食品製造業など6社が操業し、地域の活性化に寄与していましたが、4社が相次ぎ撤退・廃業し、現在操業しているのは2社のみです。新たに参入する企業を外から誘致するのは難しい状況にあり、雇用の場を確保し、地域産業の活性化につなげるためには、地域内で新たに産業を起こすことが必要です。
 釧路市阿寒町は、白糠町と合わせてエゾシカの道東地域最大の越冬地になっており、毎年1千頭前後を有害駆除により捕獲しています。その大部分が残滓として廃棄処分されており、搬入場所の確保・増える搬入費用が阿寒町のみならず近隣町村でも負担になっています。有効活用に向けての体制・制度の確立を図ることは、北海道としても課題とされています。
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域内循環による経済効果
 エゾシカ産業が確立されて、地元の資源や生産物が地元で消費されれば、地域内の経済効果が上昇し、雇用が生まれます。
 道が推進している「産消協働」運動においても、域内循環を高めることにより、生産波及効果、付加価値効果、雇用効果が増加すると試算されています。その中でも食産業は、一次産業から加工業、流通業、外食産業とすべての産業に及んでおり、効果も大きいといえます。
 さらに、狩猟マーケットの拡大にもビジネスがあります。道外ハンターの多くは、エゾシカ猟を楽しむため来道します。適切な猟場の設定やガイドサービスの提供により、スポーツハンターの誘致は、冬期滞在観光の目玉になります。
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地域ぐるみで取組み
 阿寒町では、「エゾシカ研究会」を一昨年、平成16年3月に発足し、エゾシカを産業に結びつける動きが進んでいます。この研究会(曽我部元親会長)には、「エゾシカバーガー」の開発に関わった商工会青年部、有害駆除を担当する道猟友会釧路支部阿寒3部会、シカ肉料理に取り組んでいるホテル関係者、養鹿牧場を開始した民間事業者、森林保護のためエゾシカに給餌している前田一歩園財団、養鹿事業構想を持っている阿寒町などが参加しています。
 エゾシカ肉の販売ルートについては、今後の課題として重要なポイントですが、現在(有)グリーンファームが衛生基準の高い「食肉加工センター」を建設し、加工部門を行い、取次ぎ部門は北泉開発鰍ェ担っています。
 レストランメニューとしては、すでにハンバーガー、ハンバーグ、ローストステーキ等で利用されています。町有公共温泉宿泊施設のレストランで注文されるハンバーグの7割はエゾシカハンバーグになっています。
 しかし、そこで消費される量だけでは、ビジネスとして成り立ちません。一般消費者に購入されてこそ、産業として確立できます。
 また、当町には阿寒湖温泉という国内有数の観光地を有していますので、沢山のホテルや土産品店等があります。現在まで木彫品を中心とした観光土産品が開発されてきましたが、新しいものを求めています。エゾシカ肉を活用した製品開発への取り組みが、新産業の創出、地域ブランドの確立に繋がるものと考えます。

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低脂肪で高タンパク・・・新たな地域資源

エゾシカ肉の特徴

エゾシカ肉の低脂肪で高タンパクという特徴は、健康に良い肉として有名な鶏のささ身肉に近い成分となっています。鉄分等のミネラル分の豊富さは、代表的な家畜肉とでは比較にならず、むしろレバーや貝と肩を並べるほどです。また、脂質量が少ないのでコレステロールも低いとみられます。
資料:エゾシカ肉有効活用研究事業報告書 ((社)北海道栄養士会釧根支部)
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「安心・安全・安定」な流通を支える一貫した供給システムを確立
エゾシカ肉流通のこれまでの課題
 これまで、エゾシカ肉の供給は狩猟や有害駆除されたものに限られ、安定的な生産はされていませんでした。また、エゾシカの解体処理はこれまで、個人の解体処理施設に依存しており、その施設規模・処理能力では、ホテル等の事業者が求める品質・数量の両面で安定的な供給が困難な状況にありました。
養鹿牧場、地域資源活用センター、食肉加工センターを整備
 このような中、釧路市阿寒町では、北泉開発鰍ェ平成17年3月に、野性のエゾシカを捕獲し食肉用に肥育する一時養鹿牧場を開設し、現在約400頭を肥育しています。これにより、狩猟や駆除捕獲による野性味のある肉に加えて、養鹿による安定した肉質の供給体制が整いつつあります。
 また、(有)阿寒オーストリッチがダチョウとエゾシカの食肉加工施設「地域資源活用センター」を、(有)阿寒グリーンファームがエゾシカ肉の加工施設「食肉加工センター」を整備し迅速な処理が可能となり、より良い品質の肉を安定的に流通できる体制が整いました。
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阿寒町 エゾシカ産業の流れ
1.生体捕獲⇒養鹿牧場⇒地域資源活用センター⇒食肉加工センター⇒北泉開発
 阿寒湖温泉地区で生体捕獲されたエゾシカは、北泉開発蒲{鹿牧場にて肥育された後、(有)阿寒オーストリッチ運営の地域資源活用センターにおいて、と殺解体・枝肉仕分けされ、(有)グリーンファーム運営の食肉加工センターで商品化され、北泉開発鰍通して販売される。肥育することによって肉質が向上し、高品質で均一な固体の提供が可能となる。野性ジカとの違いが明確になれば、付加価値の高い阿寒産のシカ肉の提供ができる。
 地域資源活用センターでは、ダチョウと同じように、肥育された生きたエゾシカを受け入れ、処理することになる。
2.有害駆除⇒食肉加工センター⇒北泉開発
 猟友会で有害駆除されたエゾシカは、食肉加工センターに搬入される。食肉加工センターで商品化され、北泉開発鰍通して販売される。地域資源活用センターでは、保健所の指導もあり、同じ日にダチョウとエゾシカの解体は行えないため、搬入日が予想つかない狩猟鹿は、食肉加工センターで受け入れることになる。
3.一般狩猟⇒食肉加工センター⇒北泉開発
 ハンターによる一般狩猟されたエゾシカは、有害駆除と同様に食肉加工センターで受け入れる。
 食肉加工センターで処理されたエゾシカ肉の販売は、北泉開発鰍ナ行う。

 エゾシカを新しい産業として確立するためには、需要と供給を結ぶパイプをいかに構築するかが課題である。販路を開拓し、安心して食卓に送るためには、衛生基準が高く安定して生産できる処理施設が必要である。

 一部の売れる部分だけを販売するのではなく、人気のない部位を売るためにはどのように加工するのか、産業廃棄物となる残滓の処理量を少なくするためには、エゾシカ全体が同じように売れる商品開発が必要である。

 エゾシカ肉はこれまで、正当な処理システムで販売されてきたわけではない。ハンターから闇ルートで流れていたものもある。また、簡易な許可施設で処理され、安心して使用できないものや安定して供給できないため、産業として確立できなかった。

 エゾシカの被害は、全道に広まりつつあり、今後一般狩猟だけでなく、全道的に有害駆除で淘汰される数を増やさなければならなくなるが、その肉の処理は迅速に行わなければならず、阿寒で扱うのは、時間的・距離的に無理であり、各地で拠点を造らなければ有効活用はできない。
まずは、阿寒地区で捕獲から流通までのシステムを確立させ、それが成功することによって、全道でいくつかの拠点ができれば、北海道全体での新たな食の名産が生まれる。
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阿寒町取組概略
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